雨の日に、そっと現れるつがいの陽炎。
儚げなその姿に、しばし見とれて、
夏の訪れを、知るのです。
何があっても、季節の移り変わりを、
伝えてくれる。
また、会えたことが嬉しい。
でも、私は、すっかり変わりました。
事務所のエレベーターが待ちきれなくて、
ヒールで駆け下りた階段。
肩に食い込むほどの書類を入れたバックを
軽々と持って歩いた道。
走り抜いた時間を、何処かに置き忘れてきた。
幾度もの苦難を、奇跡に後押しされて、
気がつけば、元返した場所にいる。
さすがの私も、少し疲れたかもしれない。
「死ぬこと以外は、かすり傷」
と、自分を支えてきた言葉。
目眩くきた非日常から、静かな日常に、
景色が移り変わって行く。
与えられしミッションが、成功したかは、
誰にもわからないけれど、
見えてきた終着駅に、列車は近づいている。
黄昏時、
陽炎の様な人生を、振り返り、
「任務は完了」と自分に答えた。