あっちもこっちも、
ブティックのショーウインドーに、
SALEの文字が、張り出されている。
でも、お客さんがまばらである。
私もそうであったが、外出してこそ、
着るものがいる。
コロナで、自粛生活が三ヶ月も続くと、
そろそろお茶でもと、誘われても、
なんだか、億劫でめんどくさい。
特に私達の年代は、ほったらかすと、
季節を過ぎた鉢植えのようになる。
毎日、こまめに手入れして、
今を維持していかねばならない。
そんな、いきなり、急に、
「ランチいこか!」
「飲みにいこか!」
と言われても、若い人のように、
サーッとは、出かけられないのである。
長く使わないでいると、
メーク用のファンデーションは、
逆さにしても、出てこない。
クローゼットの洋服は、何だか湿気てる。
以前なら、お天気や会う人や行く場所で、
「今日は、こんな感じかな?」
とか言いながら、それなりの雰囲気が出る。
コンスタントにそんな時間もなくなり、
三ヶ月が三年くらい経ったような気がする。
去年まで着れていた洋服が、古びて見える。
久しぶりに、
お薬を貰いに、隣町のお医者様に行った。
ドクターの顔を見たら、少し安心して、
治療もしていないのに、少し元気を、
取り戻した。
薬を待つ間、
近くのブティックの、ショーウィンドから、
涼しげな、濃紺の麻のワンピースが、
チラッと見えた。
誘われるようにお店に入り、
勧められて、大きな鏡の前で、
そのワンピースを、恐る恐るあてて見た。
「夏になったら、1番に着れるかな?」
忘れていた感触が、戻り始めている。