本当のさようならを言える人

大好きな叔母の死期に、立ち会った。

敬虔なクリスチャンであったので、

ターミナルは、ホスピスにお世話になった。

 

牧師様が、叔母の枕元で、

「神様に祈りましょう」と言われた。

叔母は、ほんの少し呼吸もあり、

祈りを聞きながら微笑んでいる。

 

私は、バックからラジカセを取り出し、

叔母の好きだったクラシックを、

静かに流した。

 

不謹慎だとは思ったが、どうしても、

ホセ.カレーラスの歌で、天国に見送って、

あげたかった。

 

目も見えず、話すこともできないけれど、

言葉や音は聴こえていると、信じていた。

足元に控えていた私の目の前で、

叔母の白い小さな足の指が、音楽に合わせて、

動いているのを見て、感動した。

 

本当の「さようなら」を伝えた。

 

 

エス様が、十字架にかけられて、

神に召された時に、一つだけ後悔したこと、

が、あったらしい。

結婚して、夫婦として成就しなかった事。

 

最近は、

「シングルが、楽ちん!

どうせ、一人で死ぬもんね」

と、言う人が多くなった。

それも、悪くは無い

 

私も強気の発言をして来たし、

覚悟は出来ているつもりでいる。

しかし、死の瞬間までの時間、

迷いや後悔に苛まれるかもしれない。

 

本当のさようならを伝えたい、

「あの人」が、そばにいてくれたら、

と、心の片隅で願っている。