つけっぱなしのテレビが暑苦しくて、
音を消去した。
手を伸ばして、リモコンの風量スイッチを、
強にした。
タオルを首に巻いたまま、3時間も、
動けないでいる。
脚が痛むので、朝飲んだ痛み止めで、
首から、汗が噴き出してくる。
読みたい本が、テーブルにあるが、
まだ、開こうとはしない。
熱中症対策のペットボトルのお茶が、
減りもせず、置いてある。
ソファに横たわり、
アイフォンを、手に取る。
私の知りたい事は、即座に答えるが、
私の事だけは、知らないでいる。
そこが良い!
触りもしない洋服も、
「これが欲しいの」と、注文すれば、
明日には手に入る。
昭和生まれの高齢者にとっては、
すこぶる便利な代物である。
暇つぶしにはもってこいだが、、
怠惰な私は、ますます自堕落になって行く。
いつの日か、
情報を結集したこの化け物みたいな存在が、
人間を、
思いのままに操る時代が来るのだろうか?
人間の、身体、精神のメカニズムは、
果てしない時間を超えて変容を繰り返し、
上質の生命体である。
だから、神様が創造されたとしか、
言いようがないのである。
しかし、
独居暮らしの私にとっては、
痒いところに手が届き、
指先一本、いえ、一声でわかってくれる、
魔法の機械。
誰とも会わず、
誰とも話さず、
誰をも愛さなくなる、
AIの官能の世界に魅了され、
知らない間に、平気になっていく恐怖。
やっぱり、人間は、
汗を流して動き、
腹立つことがあっても、人と会い、
愛に出会う事が、大切である。
人工は、どこまで行っても人工である事を、
肝に銘じている。