真善美には程遠い人生
もはや、
カレンダーが、立秋を告げている。
猛暑を追いかけて、台風がやって来る。
つけっぱなしのクーラーに寒さを感じて、
カーディガンに手を伸ばす。
思い込みも観念も吹き飛んで、
アンバランスな季節の中を、
走っている。
「先に行くよ」
と、言う息子の背中に、
「大丈夫、後で行く」
と、笑って答えたけれど、
次なる列車には、乗らない私がいる。
たどり着いた場所が、終着駅なら、
「もう、走らない」
いつの間にか、
すっかり私を追い抜いた貴方が、
優しく声をかけてくれても、
「ここに居るわ」
振り返れば過去が見え、
空を見上げれば未来が見える、
ここら辺りで、
「よしとする。」
灼熱の太陽から身を隠し、
秋の気配を感じる、涼やかな部屋で、
歩んできた人生を、記録する。
夢見て描いた風景は、
思い通りでは無かったけれど、
私が私らしく、生きてきた証がある。
真善美には、ほど遠い人生にはなったけど、
出逢わなければならなかった人達と会い、
通らねばならなかった出来事を経験し、
すべてが揃っていた事に、
今は、感謝しかないのである。
コロナが終息する日まで、
自分と向き合う時間が、
たっぷりと、出来たかもしれない。