障がい者の世界に誘われて
築70年の家に住んでいた頃、
庭の除草や掃除を、障がい者の人達に
お願いしていた。
身体が、元気に動く人たちである。
庭にフラフープを置いて、その中に入り、
除草していく。
綺麗になると、フラフープを移動させ、
なるほどと感心して眺めていた。
フラフープの中で、ピタリと動かず、
空を見上げている女性。
じっとする事ができず、井戸を触ったり、
水道を出したり、忙しい男性。
除草はきちんとするが、暑いので、
怒ってる若い男の子。
トレーナーの人たちが、ほとんどするが、
言うことを聞かない。
自分の世界が強いので、対応が難しい。
広い庭の中で、それぞれの思いで、
ゆらゆらと時間が過ぎていくのを、
見ていると、なんだか癒される。
悪意も、策略もない、
純粋な魂は、美しい。
彼らの表現するアートの中には、
私たちが見たこともない生物が存在する。
「これはなーに?」
と聞くと、
「○○さん!」
と、人の名前を言う。
どこから見ても、ただの塊である。
彼らから見たら、そんな風に映ってる。
「私も、描いてよ!」
とは、決して、言わない。
ヘドロのような塊から、口のお化けが出てる、
私の姿を描かれそうなので、やめておく。
彼らの感性には、邪心も思い込みも、
歪んだ知識もないので、ストレート。
誰の言うことも聞かず、
自由に心のままに表現する姿に、
感動がある
除草が終わって、お茶の時間。
珈琲にミスタードーナツを
テーブルについて、一緒に頂く。
その時だけ、皆んな大人の顔になる。
静かな、穏やかな時間が流れ、
私は、彼らの魂の中にいる。
「エリザベス!御馳走様!」
と、一人の青年が言うと、みんなが真似する。
いつの間に、私はエリザベスになったん?
支配と権力のエリザベス?なのか、
お姫様に見えたのか?
できれば、後者であって欲しい。