月桃の花が咲き誇る天の国

「死に場所は、此処がいい」

と、密かに思った場所がある。

 

70歳を越えると、

友人達との会話の中に、

「自分の死に方」の話が、

当たり前のように、出てくる。

 

「お風呂とトイレだけは嫌やわー!」

と、一人が言うと、

「統計的には、倒れる場所は、

一番は、お風呂らしいよ」

と、誰かが答える。

 

「出来れば、畳の上で死にたいわ!」

と言うと、大笑いになる。

とりあえず、差し迫ってはいないので、

今は、他人事である。

 

死は自分で決められないけど、

希望はある。

海外にも素晴らしいところはあるが、

旅行ではなく、死への旅立ち。

明らかに目的が違う。

 

20数年前、妹が、

若い頃に移住した、石垣島に行った折、

連れて行ってくれた島の北端。

 

その場所は、

ハイビスカス🌺が咲き誇る沖縄とは、

思えないほどの、静かなる山里。

見方によっては、丹波の山並み。

 

その当時は、

ポツンと一軒家の、宿泊所。

夜は卓袱の闇の中、

両手を広げて、満点の星空を抱き締める。

 

赤い線を辿ってゆけば、

示した通りに歩いてゆけば、

必ず、幸せになると言った母との約束を、

守れなかった地図のない道。

 

💧の形をした、

月桃の花」が咲き誇る場所、

魂の記憶の中の、天の国。

 

いつの日か、

「一人で行かねばならない、月の雫へ」

私は、

魂の戻る場所を、こっそりと見つけている。