テニスコートの女神

見せていいものだけを見せる。

聞かせていいものだけを聞かせる。

見せてはいかんものは廃棄し、

聞かせていかんものは消去する。

 

見ている方も、聞いている方も、

もはや慣れっこ、動きはしない。

 

予定通りの総裁選が、

恙無く執り行われたセレモニー。

過去にしでかしたやばい事は、

前任者の引退とともに、闇に葬られ、

次なる新任者になれば、知らぬ存ぜぬ。

どさくさ紛れに、誤魔化してしまう。

 

地球も進化し、世界も進歩を遂げたけど、

人間の深い闇に潜む醜悪は、

変わらずに存在している。

 

「政治の世界は色々あるんですわ!

素人にはわかりません」

と、政治ジャーナリストや、

大学の教授やらコメンテーターが、

笑いながら答える。

 

私達は、漫才でも見せられているのか?

それならそれで笑えるが、不愉快になる。

私の鬱病は、

コロナのせいでも、経済破綻のせいでも無く、

「貴方たち、政治家のせい」

「媚び諂うメディアのせい」

 

国のリーダーは、

国民の働きと税金に乗っかるものでなく、

大きな船に、国民を乗せて、

安全な場所に、導く人ではないのですか?

 

社会的な問題発言、不正な行動、

何を言われても、「誰のこと?」

と、どこ吹く風。

 

大坂なおみさんの、インタビューで、

今回の人権問題に関しての質問が、

記者から

「どう思われますか?」と、問われた。

 

その質問に、

「貴方は、どう思われているのか、

聞かせて欲しい」

と、毅然と、切り返したのである。

 

一つ間違えれば、

プロのテニスプレーヤーも剥奪される、

危険を冒して、勇気ある行動であった。

 

チャンピオンだからこそ、

言える言葉であり、

チャンピオンだからこそ、

言えない人もいる。

 

この瞬間、テニスコートに、

「女神が降りてきた!」

と、私には、そう見えた事は確かである。