朝、
水道の蛇口をひねると、冷たい水がでた。
８月初め、
「お湯が出てる」と、思い込み、
近所の水道屋のお兄さんに見てもらった。
「水道管が温まってるだけですわ、
９月の終わり頃には、出ますわ」
と、言われていた通りに、
いつも通りの、冷たい水。
窓越しの日差しに騙されて、
クリーニング出す前に、
最後と思い、麻のワンピースをきて外出。
通りを歩く人達のファッションは、
一瞬で、秋の装いに移り変わり、
場違いな自分の姿が恥ずかしい。
デパートの地下の食品売り場には、
「豊作、松茸！松茸三昧！」
帰りには、
「おせちの案内」まで、頂いた。
ショーウィンドウには、
今年のデザインのダウンのコートが、
素敵に飾られて、目が止まる。
「秋を飛ばして、冬ですか？」
タクシー待ちながら、空を見上げれば、
すっかり「秋晴れー！」
夏には、お世話になった、
麻のワンピースが、秋の風に吹かれて、
「寒いんですけど！」
秋が、
ちょっと顔を出しただけで、
何もかもを、早めて、
「すっかり、秋！」にしてしまうのは、
人間の仕業もあるかも知れない。
まもなく、
お正月の商戦が、巷に繰り広げられる。
春と秋だけは、
ゆっくりと味わいたいと願っている。
