大切な物は、壊れる為にある。

フランスに、仕事で行った時に、

美しいガラス細工の置物と出会った。

 

貴女のオーラの色は、

「エメラルドグリーン」

と言われた事が、頭から離れず、

思わず、購入した。

 

掌サイズの小さな物であったが、

まるで、深い海の様な、

ブルーとグリーンのグラデーションが、

キラキラと光っている。

魂を包み込む様な、ワイングラスの変形

ガラスの冷たさが、むしろ温かい。

 

数年後のある日、

その置き物がちょこんと飾られた、

テーブルを、無造作に動かした人が、

「落として、壊した!」

 

「あーっ」という間に、放り出され、

フローリングの上で、

いとも簡単に、「ガラスが破れた!」

 

私の命と、勝手に決めて、

大切にしてきたものが、

目の前で、飛んで、落ちて、壊れた。

 

「すみません!申し訳ない!」

会議で議論が白熱し、

少し、興奮気味の人が、壊した。

 

私が大切にしてることも、

思い出の品ということも、

分かった上ではあったが、

叩きつけたわけではなく、

そこにあることさえ、眼中にはない。

 

しばらく、

言葉を発することもできず、

呼吸が止まり、時間が止まった。

 

壊れたことの事実を、消し去りたくて、

目の前から、真実を誤魔化す為に、

笑いながら、

ティシュの中に包み、小さなポリ袋に、

ゴミの様に、放り込んだ。

 

謝り続ける人に、

「大丈夫!所詮、物です!」

と、冷静を装って、伝えたのである。

 

地球誕生のビックバン、

融合の反対は分裂、

みんなの意識が、パンパンになって、

そのエネルギーで、物が壊れた。

 

人間が分裂する事を、回避する為に、

私の魂の身代わりに、

大切な置き物が、破壊され、

新しい何かが、生まれた。

 

人間が壊れず、物が壊れた方が、

よっぽど救いがある。

その為に、人間を守る為に、

神様は、物を作られたのである。

 

壊した人は、今でも、悔いて、

小さな十字架を背負っている。