去年の暮れに買い忘れた手帳を、
やっと、買った。
イタリアのブランド、
「MOLESKINE」のダイアリーである。
仕事をしている時は、躊躇なく買ったが、
手帳としては高級品で、
ただの婆さんが持つにはもったいないか?
と、ためらいはある。
撥水加工の黒く光った表紙に、
ゴムバンドがついており、
年を越えて、使い始める時は、
ワクワクして、非常に嬉しいのである。
「MOLESKINE」と言う手帳に、
長い歴史と、ドラマチックな物語がある。
もう、何十冊あるかもわからないほど、
使い続けて来た私の手帳にも、
悲しみや苦しさや喜びが、
克明に記載されている。
歳を重ねる度に、
ものすごいスピードで、
脳から、自分を忘却してゆく。
私が、たとえ、名前すら忘れても、
手帳は、私の存在と歴史の証となる。
だから、
「今年から、手帳はやめようか」
と、思う度に、
人生に、ピリオドを打つような気がして、
買う事をやめられないのである。
この世で出会うこともなかった、
活躍したビジネスマン達が、
時空を越えて、新しい年の初めに、
私と同じ気持ちで、
ワクワクしながら、見開きを開いたのである。
祈りの中で、
「今年が、良き年になります様に」
と、最初のページに、
ペンを走らせはずである。
2021年の手帳を買って、
私は、今年を先取りしたのです。