2021年を先取りする

去年の暮れに買い忘れた手帳を、

やっと、買った。

イタリアのブランド、

MOLESKINE」のダイアリーである。

 

仕事をしている時は、躊躇なく買ったが、

手帳としては高級品で、

ただの婆さんが持つにはもったいないか?

と、ためらいはある。

 

撥水加工の黒く光った表紙に、

ゴムバンドがついており、

年を越えて、使い始める時は、

ワクワクして、非常に嬉しいのである。

 

MOLESKINE」と言う手帳に、

長い歴史と、ドラマチックな物語がある。

もう、何十冊あるかもわからないほど、

使い続けて来た私の手帳にも、

悲しみや苦しさや喜びが、

克明に記載されている。

 

歳を重ねる度に、

ものすごいスピードで、

脳から、自分を忘却してゆく。

私が、たとえ、名前すら忘れても、

手帳は、私の存在と歴史の証となる。

 

だから、

「今年から、手帳はやめようか」

と、思う度に、

人生に、ピリオドを打つような気がして、

買う事をやめられないのである。

 

この世で出会うこともなかった、

ピカソゴッホ、カルト的な著名作家、

活躍したビジネスマン達が、

時空を越えて、新しい年の初めに、

私と同じ気持ちで、

ワクワクしながら、見開きを開いたのである。

 

祈りの中で、

「今年が、良き年になります様に」

と、最初のページに、

ペンを走らせはずである。

 

2021年の手帳を買って、

私は、今年を先取りしたのです。