労苦の扉を開けて

「良い映画やったねー」

と、言うような人生にしたいと思う。

 

若い頃に描いていた人生の図柄とは、

歳を重ねて、違ってきたように思う。

何を目指して、人はがむしゃらに働き、

何を得ようとしていたのか、定かではない。

 

ただ、ひたすら、

キョロキョロと、周りを見渡しながら、

成長の過程の中で、自分スタイルを、

創ろうとしてきたように思う。

 

しかし、赤ペンで線引きしたレールは、

真っ直ぐにはいかず、

振り返れば、最初に書いたライフラインは、

見当たらないほど、ぐちゃぐちゃである。

 

希望も、目的も、意義も見出せない人生、

その縮図を眺めて、

やり続けてきた労苦に、絶望し、

また、そんな自分が、愛おしい。

 

誰の言葉に、乗ったのか、

誰かの指示に、従ったのか、

足のない自分に、気づきもせず、

走り抜いて、この場所にいる。

 

日々、窓の外には、

粉雪が舞い散り、

土砂降りの雨が降り、

冷たいからっ風が、吹いている。

 

思い描いた、幸せの終着駅を、

探し求めて、乗り続けてきた、

銀河鉄道スリーナイン。

 

長旅に、少し疲れて、

車窓から、眺める景色に安堵する。

見ている景色は、何処までも美しく、

荘厳である。

 

何一つ得るものもなく、

幾つもの「労苦の扉」を開け続けて、

涙が、胸を伝う。

 

旅を終え、温かな部屋のソファに、

探し求めていた、幸せのありかを

見つけたように思う。