冬の嵐を、追いかけて、
遠くに、春の足音が聞こえる。
漆黒の闇の中、
満月が放つ、青い妄想が光に変わる。
芽吹いた一本桜に、粉雪が舞い、
冷たい、吹雪となって、
悲しみが、飛び散ってゆく。
もう一度だけ、
「生き返らせて!」と、
時間を元返す、女神のトリアージ。
失った愛を探しに、
交わされていた約束を、果たすために、
記憶の中へと、誘う。
何処で、出逢ったのか、
何を渡されたのか、
嘘で固めた過去が、崩壊してゆく。
掌の中で、
キラキラと光っていた原石を、
隠した場所まで、遡る。
硬く閉ざされた、
忘却の扉を、こじ開けて、
禁断の結界が、溶けてゆく。
本当になる事の定義を犯せば、
私が私を失ってしまう。
それでも、
「あの人を、愛していた」と、
物言わぬ魂が、煌めいて反映する。