奇跡の春

暖かさに誘われて、

チラチラ春が見え隠れ。

 

いつもより、

優しいコートに、着替えて出れば、

こっそり、冬が待ち伏せる。

 

逃げる冬を追いかけて、

春が舞い散る桜色。

隠れん坊みたいに、懐かしむ。

 

鳴る前に渡り切りたい踏切で、

笑顔の列車を見送りたくて、

どうしようかと、心が惑う。

 

もう、ひと回りが、苦しくて、

イートインでひと休み。

マスクが無意味な高校生、

元気な若さに圧倒されて、

隅っこで、一人静かにカフェオーレ

 

これ以上、

「頑張って!」と、誰にも言えず、

同じ思いを抱き締めて、

道ゆく人が、愛おしい。

 

移り変わる季節の中で、

見上げた桜の木の枝に、

小さな蕾が膨らんで、

奇跡の春を、待ち侘びる。