「おかげさまで、以前からのお客様が、
来ていただいているので」
と、1年ぶりに顔を出したブティックで、
元気そうなスタッフと再会した。
「へぇー、そうなんや」
この一年、すっかり暮らし方が変わった、
私とは違い、
変化もなく過ごされている人たちもいる事に、
少し驚いた。
街にある唯一のデパートのなかにある、
富裕層の高齢者達の憩いの場である。
大きなデパートではないが、
明らかに値段の違う、地下の高級食材売り場、
有名なお菓子やパン屋が並び、
一通りの化粧品から、日用雑貨まで、
揃わないものはない。
ファッションフロアには、
その街のお客様に見合った、
華美すぎず、それでも洗練された品格のある、
お洒落なブランドが、並んでいる。
私の母も、96歳ではあるが、
たまに会うと、素敵なファッションの出立ち。
行く店も決まっていて、
「必ず、一枚は購入」のつもりで行くらしい。
「今回は、予算オーバーでパス!」
と、私のような客は少ない。
いわゆる、
「おいといのない」富裕層専門店。
時々、
「そのお歳で、そのファッションは、
ないでしょう!」
と言うような高齢者がいる。
売る側にも、疑問を覚える様な場面に、
遭遇したことは幾度かはある。
たとえ、コロナが終息しても、
何もかも失ない、路頭に迷った人達、
使い道のないお金をじゃぶじゃぶ持って、
路頭に迷った人達、
否が応でもやってくる格差社会に、
次なる越えるべき峠が見えてくる。