まるで、酔っ払いのように、
柱に寄りかかり、ため息をつく。
空は青く、かすかに春の風を感じながら、
宇宙が、頭を踏みつけてくる。
「生きているのが、しんどくなった」
消え入るような、声で囁く人がいる。
窓に張り付いた青白い蛾が、
私を見つめている。
死んでいるように見えて、
小さな息遣いが、伝わってくる。
迷い道を、風に乗り、
冷たいガラスに、へばりついた姿は、
今の私が、重なって見える。
途方もなく、馬鹿げた時代に、
優しい貴方の声が聞こえる。
世界の悲鳴と、叫び声から解放されて、
暖かな温もりの手の中に、抱かれる。
奇妙な不安が、奇妙な妄想を生み、
秘めたる強さと、交代する。
私でない私が、
もう一人のうちなる私が、
明るい光の中に、美意識の舞台に、
飛び出してゆく音を、確認する。