たった一人しかいない私

ありふれた日常の中で、

少しずつ、何処かが、蝕まれてゆく。

 

歳に追い討ちをかける様に、

闘う精神が、徐々に疲弊してゆく。

 

前頭葉の空回りが、行手を阻み、

海馬は、過去も未来も消し去ってゆく。

 

もがいても、落胆しても、

砂上の砂は、崩れ流れて、元の木阿弥。

 

小さな咳払いを3度、試みて、

深い呼吸を3度、繰り返し、

瞑想の出口から、鬼を吐き出す。

 

善を入れて、悪を吐き出す、

肺呼吸。

打ち鳴らす鼓動は、

バランスを取るための心臓の音、

貴女の命令しか聞かない、

頑固な脳は、螺旋を描く。

 

精密に作られた人間は、

どれほど優秀な人間でも、

これ以上のものは創れないのである。

 

私は、未来永劫、私一人である。

人は、みな、貴重な存在である。