「エピソード記憶」を探して

歳を重ねると、

謙虚に成るかと思いきや、

言いたい放題、ズケズケ言う人もいる。

 

若い頃には、

人前では気をつけているが、

脳のストッパーが、効かなくなり、

親しい友人や、身内には、

思わず、本音が出てしまう。

年甲斐もなく、決裂する。

 

70歳を過ぎると、

周りでも、チラホラ認知症の人もいて、

「あれ?なんか変!」

と、言葉や行動が、おかしいと気づく。

 

気づいてもらえれば、

まだ、処置もあり、保護されるが、

元々の性格が、

怒りっぽかったり、人と意見が違うと、

ますます、敬遠され、孤立する、

 

本人に、聞くわけにもいかず、

しばらくすると、

アルツハイマーでした」

と、家族から連絡が入る。

 

付き合いは続けるが、

段々、言ってることも、チグハグになり、

忘れるので、約束はできず、

対応が、困難になる。

 

その内、

鬱になったり、寝たきりになったり、

しばらくすると、

「施設に入ったらしい」と、

風の便りが入ってくる。

 

「家族より、死ぬまで、友達よね」

と言ってた人も、そうなると、

家族のもとへ、戻っていく。

 

高齢者同士で、

小旅行、

ランチやディナー、

ヨガやリハビリ教室、

元気な人は、山登り、

 

安全な場所で安心な人達と、

食って、しゃべって、動いているのは、

老いを維持して、認知症を遅らせる、

ための、行動である。

 

忘却は、見事に進んで、

さっきの事、昨日の事、

人の名前も、ものの名前も、

脳の中で、止まる事なく、

滝のように流れてしまう。

 

しかし、不思議な事に、

何年も前の事も、

鮮明な画像があり、感動した言葉が、

心に残ってる場合は、

決して、忘れはしないのである。

 

エピソード記憶」として、

心に刻み込まれている。

あの時の夫の優しさ、

壮大な、神のような自然、

文化とアートの、究極の美学、

 

もし、

家族の中に、

認知症のお爺さんやお婆さんがいたら、

エピソード記憶」の、

画像と言葉を、一緒に探してあげて欲しい。

 

認知症は、病気ではない。

日常と、非日常の、新しい世界。

たまには、そんな世界に、

お邪魔するのも、経験となる。