「芥川龍之介」に出会って

幼い頃から、

おもちゃのない家で育ち、

本棚に並んだ本を、読むしかなかった。

 

家族が、

相談相手になる様な時代でもなく、

歴史も、文化も、世の中のことも、

人間関係のいやらしさも、

本から学んだのである。

 

頭でっかちの、おしゃまな女の子で、

親からも、親戚からも、

それなりの批判や、それなりの評価も、

受けて育った。

 

壁一面の本棚には、

作家の名前が「あいうえお」順にならび、

最初に手に取ったのが、

あ行の、日本文学全集「芥川龍之介」。

 

暗く、闇の世界を描く作家であり、

人間の本質を見抜く、天才である。

 

最初に、個性的な、

「この方」に、出会ってしまったので、

純文学の御涙頂戴は、好まなかったし、

結構、影響は大きかった気がする。

 

大人になってからも、

「人を見たら泥棒」とは思わないが、

この人の真意は何かを、追求しすぎて、

素直さからは、遠のいて、

「人並みの幸せ」からも、遠のいた。

 

「普通じゃない」

「変わってる」

など、ある意味、差別用語で、

言われることもあったが、

「普通という概念」が、それぞれで、

気にもせず、「普通」に、生きて来た。

 

有象無象の社会の中で、

有無を言わさず、生きるには、

「地位か名誉か金か」に、走れば、

うるさい人間を、黙らせる事も出来る。

 

しかし、残念ながら、

「夢見る夢子」で、その軽さゆえに、

自然の荘厳さに、

宇宙の美学に、

崇高な人の美意識に、

憧れて生きて来たので、

外堀は埋められず、裸一貫みたいな人生。

 

この世的には、

損か得かと、言われたら、損!

好きか嫌いかと、言われたら、好き!

幸せか不幸せかと、言われたら、幸せ!

もう一度、

この世に、生まれて来たいかと言われたら、

「うーん?」と、考えちゃう!

 

ただ、私自身も、

出会った人たちも、

ドラマ仕立ての人生で、

「おもしろかった!」

と、言える事は、確かである。