「放火殺人」は、罪が重い。
人間を焼き殺すという行為は、
残虐で、悲惨である。
尋常な精神ではない。
深い怨みや、憎しみから来るものも、
無くはないが、
火をつけるという行為だけを見れば、
簡単な動作である。
人間のどこかに潜んでいる、
悪魔性が、泡のように噴き出す、
一瞬の行為である。
相手の肉体に、
直接触れることもなく、
相手を傷つける実感もなく、
犯罪を犯している意識は薄い。
しかし、
油をまいた、炎の中で、
殺人鬼の感情が、明らかに蠢いている。
朝、
「行ってきます」
と、元気に出て行った家族が、
夜には、
変わり果てた姿で戻ってくる。
事実を言われても、見せられても、
脳が受け止めるまでは、
相当の時間がかかるだろう。
運命などと、簡単には解釈は出来ず、
日常の中で、
起こりうることなど、
自分では、想像だにしない悲劇である。
動機を、原因を、訳を知りたいと、
残された遺族は、
未来永劫、彷徨い続ける。
全ての悪の条件が、
縦軸に並んだ瞬間、
誰にでも起こりうる、現実である。