「初めまして、
私ごとですが、今朝、
15年、飼っていた犬が死にました。」
「授業中、私が涙を流していたら、
ごめんなさい」
いきなり、
今日から始まる、担当講師の言葉に、
よそよそしい、白けた空気の色が、
変わった瞬間があった。
「想定外の挨拶」に、
生徒達は、困惑したが、
思い込みや観念が、破壊され、
脳は、真っ白に切り替わったのである。
生徒達は、真剣に学び、
メッセージは、伝えられて、
クリアな授業となった。
白板に向かう度に、
涙を流している、私の背中に、
生徒達の、啜り泣きの声が、
聴こえていた、
初めての出会いであっても、
同じ「悲しみや、苦しみ」を、
どの人の心も、知っている。
初めての出会いは、
聞く側も、話す側も、
戸惑いと、緊張感がある。
それを打ち破る為の、
「アイスブレイクトーク」
社会の中で、教育の場面で、
マニュアル化された、
コミュニケーション技術など、
生きた心に、通用するわけはない。
「今日出会える生徒達」に、
起こる出来事、
素直な心模様、
伝えておきたい事を、
「私事ですが」の挨拶から、
講義が、始まる事もある。