ポッケに入った、小さなマスク

冬の勢いに、

立ち止まっていた春の足音が、

やっと、聞こえてきた。

 

川面に咲く、小さな花に、

生命の芽吹きを、感じて、

安堵する。

 

猛威をふるう、ウイルスが、

空の青さに、溶けてゆく、

懸命に、命を守る人達が、

優しい風に、癒される。

 

日常に、

すっかり馴染んだ、小さなマスク、

誰かを守って、そばにいる。

隠したかった、私の心に、

吐く息が温かい。

 

想像を超えた、自然の前で、

人間の弱さを思い知らされ、

傲慢な高さから、堕ちてゆく。

 

信じていたあの人も、

大切だったこの人も、

妄想のかけらになって、

消えてゆく。

 

ポッケに入った、小さなマスクが、

初めて出会った、白衣の人が、

思いもかけなかった人達が、

貴方のそばで、

貴方の命を、護ってる。