「スカイブルー」のワイングラス

不気味な雲が、

押さえ込んだ、

月の光を、飲み込んでいる。

 

生暖かな南風が、

生まれたての台風を、

まもなく、運んでくる。

 

ミステリアスな、夜の帳が、

空を覆って、舞台は出来上がり、

何処かの屋根裏で、

ドラキュラ伯爵が、覚醒する。

 

部屋の、小さな窓から、

壮大なドラマが、

パノラマの様に、映し出される。

 

「ピンク色が好きな人は、寂しい人よ!」

昔、誰かが言った言葉が、

頭をよぎる。

 

たわいない、

女子同士の会話なのに、

「当たらずといえども遠からず」

何故か、

頭の片隅に残っている。

 

私のクローゼットの中は、

ほぼ、

紺、グレー、黒、白と、

ベーシックな色が、並んでいる。

 

しかし、

ベットカバー、

ホームウエアー、

タオルやクッションなどは、

ピンク色を、

無意識に選んでいる。

 

日常の中で、

暮らしの中で、

ほっとする様な、

温かく、包み込んでくれる、

ピンク色を、揃えてきた。

 

確かに、

誰にも言わなかったけれど、

ずーっと、「寂しかった」

私がいた。

 

群衆の中に、

ピンク色の服を着た、女の子が、

いつも、

一人ぼっちで、立っていた。

 

長い年月を、重ねて、

今、

本当の一人暮らしになったけど、

今日一日を、

丁寧に、大切に歩み始めている。

 

最近、

「スカイブルー」の、

美しいワイングラスが、

食卓に、

爽やかな、色どりを、添えている。