母から、手渡されたマニュアル本

亡き母から、手渡された、

「人生のマニュアル本」

もはや、文字も霞んで、

見えにくくなってきた。

 

40歳で、

命を絶った人が、書いたもの、

どこを探しても、

倍を生きてきた私にとっての、

マニュアルは、

途中から、消えている。

 

「それだけ、生きたら、それなりに」

と、母の声が、聞こえるが、

残念ながら、

未だ、迷い道から、抜け出せないでいる。

 

探究心と、好奇心の、

強い私を、心配して、

数々の、お稽古事も、

私には、全くもって、身に付かず。

 

母を、

「悲しませたくない」

だけを、信条に、

此処までは、生きて来たけど、

 

「古すぎて、使えない」

マニュアル本と、地図を片手に、

立ち往生している。

 

「地図のない道」で、

サイコロ振って、

決めるわけにもいかず、

あちこち、動かなくなった身体で、

「どうすんの!」

と、思案に暮れてる、私がいる。

 

皮肉にも、

台風が、運んで来た、

「秋の風」の中に、

60年前の、

優しい母の姿が、見え隠れする。

 

そっと、渡された、

困った時の、マニュアル本も、

迷った時の、地図も、

 

今は、私が、新しいものに、

書き換えて、

心の中の本棚に、置かれている。