この静けさの中で、

何処にミサイルが、

飛んでくるかわからない、

ウクライナの夜、

 

今は、

生暖かな風の中に、

冷たい、霧雨が舞っている。

近くで、遠くで、

台風の、警報が鳴っている。

 

いきなりの、

サイレンが来たら、

暴風雨の中で、

「命を落とす」かも知れない。

 

日本列島、

真っ赤な、危険地域のど真ん中、

「襲われる」感覚は、

この静けさの中で、

まだ、感じてはいない。

 

雨に濡れた道を、

「ジョリジョリ」と、音を立てて、

戦車が向かって来る、

「気配」がある。

 

風速40メートルの、渦の中、

吹き飛ばされる、感覚は、

味わったことはないけれど、

 

電信柱の影に隠れて、

向かい風に、抗って、

吹き荒れる嵐が、止むのを、

待っていた少女の頃、

 

誰も、

助けにも、来なかった悲しみを、

台風が、来るたびに、

思い出す。

 

10月の、

台風の季節に、「母は、死んだ」

セーラー服が、

透き通るほどに、雨に濡れて、

 

迎えには、

決して来ない母を、

待って、待ち続けて、

立ち尽くしていた雨の中。

 

いつもと違う、

雨音を聞きながら、

「生きてる事が、奇跡かも」と、

強い自分が、

励ましてくれている。