何気に、
本屋で手に取った一冊が、
人生観を変える時がある。
心が傷つき、
誰にも聞けず、
救われないほど、病んでいる時、
「答え」のような本に、
出会える時がある。
大人になりきれない頃に、
亡くなった、優しい実母が、
唯一、残してくれていた、
数々の本が、
私の成長を、支援してくれた。
厳しい家計のやりくりの中で、
世界文学全集、
日本文学全集、
美術全集、
専門書、から、図鑑まで、
少しずつ、買い溜めて行った。
母の中に、
「早死に」する事が、
分かっていたのかは、
定かではないが、
封建的な、厳しい父親、
偏った家系の制度の中で、
「真実」を、伝える為に、
密かに、認めてきたようにも、
感じている。
寂しい時、
苦しい時に、
「別世界」を、見せてくれる本の中に、
希望や、夢を、見出し、
励まされてきた。
女性として、
誰にも、聞けない不安な事も、
医学書が、丁寧に教えてくれた。
人を好きになる前に、
人を愛する前に、
本の中の、
芥川龍之介を、愛し、
夏目漱石に、恋をした。
残念ながら、
リアルな世界では、
それ程の人には、出会わずの人生。
本の中で、
多くの、素晴らしい人達、
紆余曲折の人生、
自然の神秘を、知る事で、
勇気づけられて、生きて来れた。
今になって、
何故、母が、子供達に、
数々の本を、残して逝ったか、
深く、理解できたのである。