「看護師が足らないので、
臨時休業しました」
親の代からの、信頼を得て、
何十年続いた、二代目の医院が、
予告もなしに、お休みだと聞いた。
テレビでは、
人手不足が、取り上げられ、
聞いてはいたが、
いよいよ、現実は身近に迫っている。
「開業医」は、
命に関わり、
急に、体調が悪くなった時の、
命綱である。
コロナ禍以降、
救急車が、来てもらえない、
入院できず、自宅で死去、
ワクチンは足らず、
薬は足らず、
前代未聞の状況を、経験して来た。
長く生きて来たが、
「死にかけている」人を、
診れないなど、
この日本で、あり得ない話である。
アカデミックな、
資格を取得して、医師となり、
勤務医を経て、民間の開業医となり、
よほどのことがない限り、
人生、順風満帆であったはず。
災害や、事故事件があれば、
自衛隊がかけつけ、
病院が、すぐさま、受け入れるのが、
通常であり、
見ている方も、安堵する。
国民の為に、
張り巡らされていた、
「セーフティネット」が、壊れていく、
人の命、人権、困窮者を、
守るために、
幾重にも重ねたネットが、
人々を、掬い上げて来た、
先進国であり、民主国家である。
世界が揺らぐほどの、
混迷の時代に、
どの国も、悲惨な状況が、続いている。
それでも、
地球は回り続け、
化学は、宇宙にロケットを放ち、
企業は、「儲け」に走っている。
そんな中で、
目に見えないウイルスと、闘い、
治療薬の研究に、専念している、
医学者もいる。
間もなく、
「第8波」が、猛威を振るい、
同じ事が、繰り返されて、
誰かが、
人生の中で、
予期しなかった事に、向き合うだろう。
軌道を外れた、螺旋から、
振り落とされる事なく、
終着駅に、到着したいと、
願ってはいる。