「終わりのゴング」が、聞こえてきたら
寒さが、
少し、緩んだ様な、朝。
突風が、
吹き荒れる時代の中で、
小さな街の小さな部屋での、
ささやかな暮らしである。
お陰様で、
情報機器は、揃っているので
「井の中の蛙」には、
ならないでいる。
70歳を、越えれば、
「元気老人」が、稀にはいるが、
ほとんどの、高齢者は、
「社会的な死」を、迎える。
過去の栄光も、
すこぶる健康だった、肉体も、
「パンドラーの箱の中」に、
思い出として、残されている、
人並みの、夢もあり、
多少なりとの、野心もあり、
切っても切れない執着も、
持ち合わせてはいたが、
「終わりのゴング」が、
聞こえてきたら、
達成感と、諦めが、湧いてきて、
静かに、
次なるステージに向かうのである。
誰が、決めたか知らないけれど、
65歳からを、前期高齢者、
75歳からを、中期高齢者、
85歳からを、後期高齢者
その歳を跨ぐたびに、線引きされて、
「気分は良くない!」のは、
当たり前。
もはや、若い頃の、
「正義の味方」も、
「不条理に抗う」気持ちも、
青い空の彼方に、消えてゆく。
「長いトンネルを抜けると、
そこは、雪国だった」
川端康成の小説に書かれた、
一節の様に、
残された人生、そこには、
新たなる、異次元の世界が、
存在している。