みーんな忘れて、身軽になって

2歳の頃、

揺らしすぎた、

揺り籠から、

妹が、飛び出して、宙を舞った事、

忘れました。

 

10歳の頃、

跳び箱に、夢中になって、

門限に遅れて、帰ったら、

お父さんの、雷が落ちた事、

忘れました。

 

13歳の頃、

教師が選ぶ、

学級委員を、断ったら、

それ以来、意地悪になった先生の事、

忘れました。

 

14歳の頃、

病院に、駆けつけたら、

お母さんは、

私を待たずに、天国に逝ってしまった事、

忘れました。

 

18歳の頃、

初めてのバイトのお金で、買った、

大好きだった、

森英恵さんの、シルクのワンピースの事、

忘れました。

 

20歳から30歳の頃、

女だてらに、社会へ飛び出し、

最も、天と地を味わった事、

忘れました。

 

40歳の頃、

頑なになった、

夫の大きな背中に、心の中で、

「さようなら」を、言った事、

忘れました。

 

そして今、

生きて、70数年、

思い出も、登場人物も、入れ替わり、

 

人生の悲喜交々、

大層に考えていた、人生ドラマも、

過ぎて仕舞えば、大した事は無い。

 

みーんな、忘れて、

身軽になって、

「0地点」に、立っている。

来年からは、

第二幕、新しい門出が、始まる。