「非常口」を、無意識に探している

白いタイル張りの、

6階建てのビルの中に、

私が通う、耳鼻科がある。

 

三、四人入れば、

いっぱいになる、エレベーターで、

4階に降りると、

クリニックはある。

 

白で統一された、

清潔感のある待合室で、

渡された、順番カードを、

見ながら、ボーッとしていたら、

 

ふと、

梅田のクリニックの、

「放火事件」が、頭をよぎった。

 

あの事件を知るまでは、

想像すら、したこともなかったが、

最近、ビルの中にある、

診療所の多い事に、気付かされて、

「非常口」を、

無意識に探している。

 

逃げようもない、

防ぎようもない、

事故や事件で、命を落とす事は、

落ちる飛行機に、乗ってしまう程、

助かりようがない。

 

昔は、

マンションや、オフィスは、

最上階、角部屋を、

好んで住んできたが、

今は、

脚も不自由になり、

「地に足ついた所」に、落ち着いた。

 

オフィスに、

一人でいると、

時々、「ぞーっとする」ことがある。

人の出入りもあり、

鍵もかけずにいると、

いきなり、知らない人も、訪問に来る。

 

日本は、

治安も良く、平和であり、

失くした財布が、出て来るような国、

テロもなければ、

ミサイルも、飛んではこなかった。

 

しかし、

日本という国を、

オープンな、観光国として、

経済を、発展させてゆく方向に、

舵は切られてゆく。

 

のんびり構えて、暮らし、

外出しても、危機感も希薄、

変わりゆく、

混迷の時代の中で、

自分の命は、自分で守る、

決意は、

改めて必要となってくる。