窓ガラスに、映る、
「すっかり、春」が、
見せかけに見えて、
薄手のコートを、躊躇する。
気分だけは、
「めっきり春」のまま、
休日の外出に、心が躍る。
いつの頃からか、
同じ道を、「北へ、北へ」と、
車を走らせる様になった。
華やかな、
巨大な街へと、
「東へ西へ」と、行ったり来たりの、
若い頃の想い出が、
どこまでも続く、
凛と佇む、山河の風景の中に、
溶けてゆく。
あの山の峠を、超えれば、
「何かがある」と、信じて、
幾つかの、
山々を、越えてきたけれど、
「次なる峠」が、
待っていただけ。
そして、
今、「最後の峠」で、
聳え立つ、
「厳しい山」を、見上げて、
もはや、
この身体では、
この気力では、
「前進する事」は、不可能と、
観念したのである。
誰かの、
「前進!」と言う声に、
背中を押されて、来たけれど、
「もはや、ここまで」と、
終止符を、打った日がある。
次なるステージは、
未知の世界である、
精神の「高み」へと、
誘われてゆく
「意識の眼」が、
キラキラと、輝いて、
ゆっくりと、
青い空へと、登り始める。