私の料理好きは有名では無い。

前の晩から、お水に豆を浸し、朝からコトコト炊いてる姿も、鳥のガラに長ネギ生姜を入れて中華スープを作ってる姿も誰も知らない。
添加物は敵のように考えていた私は、昔から料理にはこだわっていた。
そんな私を知る人は少ない。
友人達を招いて楽しく語らうパーティもなし、
毎日のように人とは会うが、苦しい悩み相談や
朝から晩まで仕事の延長戦のような会話。
残念ながら、今は食べてくれる家族はいないが、ストレス発散で料理好きは変わらない。
私の姉もそこそこ料理が上手で、お酒の好きな夫婦で、お酒が終わるまで料理は続く。
姉夫婦も娘達が嫁ぎ、独りもんの私もよく食事時お邪魔した。
「お父さん、お鍋のガスつけて!」
「まだ先に飲んだらあかんよ!」
「何やってんのよ!」
何にもしてない旦那を怒り飛ばしながらの食事である。
そんな姉の言葉にビクビクしながら、義兄の顔を見るとどこ吹く風で、ニコニコと姉の言葉などきいてはいない!
私は、昔から喧嘩ごしの言葉が飛び交う姉夫婦の家庭の会話が好きであった。
私の家族は、食事時、誰も物言わず黙々と食べ、終わればさっさと皆部屋に戻る。
3時間かけて作った料理も15分で終わる。
ワイワイガヤガヤのない、いつも緊張が張りつめたような食卓。
きちんとした料理を作り、家族の健康を維持し、安全で、衛生的な料理さえ食べていれば大丈夫と思い込んでいた私に欠けていたもの。
家族の食事の大切さは、料理の質でも美味しさでもなかったかも知れません。