阪急芦屋川ムートンドールでランチ

初めて降りた人達が、びっくりするほど質素な駅である。
近辺に、私学の学校が、いくつかある為、子供や学生が往来するが、駅前にはロータリーもなく、テナントビルは一件もない。
電車の高架を利用した商店街も、店並は揃わず、おしゃれなブティックがあるかと思えば、隣の肉屋がコロッケを揚げているので、昼ともなれば、揚げ物の匂いが風に乗る。
途中で、お寺があったり、中華料理にタイ料理とオリエンタルムードに変わる。
夜ともなれば、、家路を急ぐ人達がまばらに通り、薄暗い電灯は、田舎の温泉街の通りを思わせる。
古くからの芦屋の住民にとっては、懐かしく、愛すべき街ではあるが、開発されない場所は、
少し、気の毒な気もする。
全国的にも、「芦屋に住んでます」といえば、
「すごーい!」と答える位の街なので、来訪者は、なんとも言いがたく無言である。
しかし、
改札口を出て、北を見れば、山並みの中に瀟洒な豪邸や高級マンションが立ち並んでいる。
雪解けの水が、海まで続く芦屋川に流れ、
蒼い空、緑の山並み、連なる桜並木に小鳥がさえずり、すっきりした装いの老夫婦が、高価そうな犬を連れてのお散歩姿がちらほら。
夕方ともなれば、子供や主人のお迎えにママ達のピカピカの高級外車がオートショウの様に列を作る。
行き交う市バスが、おおきなクラクションを鳴らし続けるが、微動だにしない。
市バスのおっちゃんが怒るのも無理ないわ。
駅のすぐ北側に、小さな集合場所があり、いきなりおおきな男女の公衆トイレが、真正面に設置されている。
芦屋名物、山登り軍団の人達が、その場所で集合、点呼し、トイレに行って、六甲山系を縦断する出発点である。
ちなみに、その数は何百人を超え、張り切って登る人達は、ちなみに平均年齢70歳である。
私なんかスーパー歩いているだけでヘトヘトになるので、彼らは怪物?宇宙人?みたいに見えてしまう。
健康生活を掲げた国の指針に沿って、高齢者の生きがいを支援し、高齢者には、絶対に欠かせないトイレを設置した、芦屋市は寛大な配慮である。
小さな駅が、人人人で中国みたいになっている人混みを、かき分けて、60年は経っているだろう石の階段を、完全装備の山ボーイ、山ガールと一緒に並んで上がる。
山へ行く彼らを見送りながら、私たち三人組は、いつもよりおしゃれして、チャラチャラ、ジャラジャラ、シルクのスカートをなびかせて、芦屋で1番の古いフランス料理のレストランのドアを開ける。
今の騒ぎはなーにと思わせるほどの、静かな空間に、ダウンライトが真っ白なテーブルクロスを照らし、白い壁には軽いタッチの絵画が並んでいる。
若い頃からの芦屋のイメージ通りの、雰囲気が漂う異空間。
何度か滞在したパリ郊外には、星三つ!と言われる様なレストランが存在している。
ムッシュが、一人で調理されているが、絶妙なタイミングでマダムが料理を運ぶ。
料理が際立つおもてなしのプロに会ったのは日本では珍しい。
さてお料理はといえば、こんな時写真を撮って一緒に送ればgoodなんでしょうが、私が取れば不味くなるので、遠慮しておきます。
新しい創作フランス料理の様に、カラフルな花も添えられてはいず、きゃーとか、可愛い!とかの声が上がることはなく、一つ一つのメニューにフランスの伝統の美学が隠されていて、メインの女性どものおしゃべりを、決して邪魔する様なお料理ではないのです
おしゃべりに疲れた頃に、甘いデザートがでて、お料理はあまり覚えてないけれど、確かに胸にいっぱいの幸せ感が満ちている。
今日は、久しぶりに、ムートンドールに予約を入れて、楽しいおしゃべりタイムを味わってきます。