君と好きな人が100年続きますよう。

2004年5月に、一青窈がリリースした曲ハナミズキの中の大好きな歌詞である。
この家にもう二度と戻ることは無いだろうと、
白色と薄紅色のハナミズキの苗を、玄関の前に植えて、その後、家を出た。
誰もいない大きな家で、夫はさほど、寂しくもなく、不自由でもなく暮らしていたが、
或る日、病に倒れた。
お互い、理解の上での別居と認識はしていた。結婚していたことすら忘れるほど、仕事に没頭していた私は、予想だにしない事態に、少々戸惑いはしたが、必然的に夫をサポートすることとなった。
歳のせいか、引き戻された運命に、がっかりすることもなく、神様の意図を素直に受け止めて、弱者となった夫の世話を引き受けたのである。
別離を決意して植えたハナミズキが、私の背丈を越えるほどに成長し、今、まさに、玄関の前で、真っ白な可憐な花が咲き誇っている。
残念ながら、同時に植えた薄紅色のハナミズキは、花を咲かせることもなく、枯れて、いつのまにか消滅していた。
私が、この家に馴染まなかったように、薄紅色のハナミズキもこの庭では、生きられなかったのかもしれません。
忘れもしない悲劇の多発テロ、9・11事件の時に、一青窈が深い悲しみの中で、書き上げた作品がハナミズキという曲であることを、ずいぶん後で知った。
この歌詞を聴く度に、私の中で愛と憎しみが交錯する人間の愚かさを超えて、他者の幸せを想い、願う気持ちが重なり、絶望と失意の中、心を支えてくれた曲であった。
「ボートに後一人しか乗れない時に、溺れている人たちの誰を助けますか?」と、生徒によく問いかけたことがあった。
答えは皆、自分の家族が大半であった。
「福祉に携わる人間は、伸ばした手を最初に握って来た人を助けなければならない。たとえ、自分の子供でなかったとしても」と、私は教えて来たのです。
だから、夫の「助けて」という小さな声を、
私には、聞き逃すことはできなかったのかも知れません。