アダルトな女性の美しさ。

頭のてっぺんから、足のつま先まで、完璧に綺麗な高齢の女性達がいる。
時間とお金が、相当かかっているはず。
1日24時間、私には組み立てられない作業である。
たまにイヤリングでもつけようとすると、髪の毛がうっとおしい。
指輪に至っては、マニュキュアなど、引き出しの隅で岩石化している。
デビ夫人クラスの宝石を、さりげなく付けているように見えて、実はたゆまぬ努力が必要である。
そうで無いと、本物の宝石に悪いでしょ!
ヨーロッパ、特にフランスのアダルトの女性達と、縁あってたくさん知り合った。
どの人も、黒、紺、グレーのベーシックな装いの中に、赤や、ロイヤルブルーなどの鮮やかな色のセーターやインナーを合わせ、知的で爽やかなファッションで、昼間はほとんど宝石をつけずに過ごす。
夜になって、星のついたレストランやパーティにお呼ばれした時には、ドレスにあった宝石が、どこかに一点輝いていた。
あまり素敵なので聞いてみると、ほとんどが母親からのお下がりだと言う。
それ以来、日本での昼間からチャラチャラ光り物や装飾品を、意識して身につけなくなった。海外に行く時だけ、ここぞの時に身につける、黒と白のパールのイヤリングとリングのスリーセットを、トランクに忍ばせていた。
同じ歳なのに、何故にフランスの女性達は美しいのか、何度目かの訪仏で解読できたのである
まず、夜になるとどの館にも、店にも、蛍光灯がなかったのである。
アダルトの女性達が、一番美しく見えるための照明を考えてのインテリアが施されていると言う。
成熟した大人の女性として認められ、男性から大切にされている証明である。
日本の中では、三十路を過ぎると「オバハン」と呼ばれ、還暦といおうものなら、女では無い扱いを受け、「ババア!」とまで蔑まれる。
今でこそ、日本の医療も美容クリニックも出来て、保険で、シミ取りシワ取り、お盛んになって、お手軽にヒヤルロンサン注入治療。
フランスの美容治療は、昔から保険が効いて、
内科のドクターがシミを見つけ、その場で簡単に処置が行われていた。
で、日本のアダルトな女性達が、いきなり美容クリニックに行かねばならなかった原因は、
「蛍光灯」でありました。
LEDかなんか知らんけど、毛穴まで見えるような照明を点けんといてほしい!
部屋の片隅に、温もりのある間接照明で良いではありませんか?
そうすれば、中年夫婦の、食事時の会話も、少しは、ロマンティックになるかも知れません。