貴方を救うために

一人では、人を救うことは出来ない。
ましてや、自己満足は救いにはならない。
自他共に、認められなければ救いではない。
福祉に関わる人間は、まず、人を救うということから、学んで行く。
障害者、高齢者、社会的弱者、困難者、関わる人々は、全て人の助けや国の助けがなくては生きていけない。
助ける人は、医師、看護師、救急救命士、消防士、社会福祉士介護福祉士、その他の有資格者が支援する。
毎日の仕事自体が、人を助けることであり、そのマニュアルとシステムを一人一人に当てはめて行く。
国の制度や医者の技術で助けられる人は、簡単である。
しかし、突然に起こる震災で、いきなり家族を失い、家を失った人を救うのは難しい。
それでも、福祉に携わる人間は、その現実に向き合わなければならない。
その為に、有資格者になった人々には、どんな時にも、他者のために全力投入する。
資格を持っていても、ただの人であるが、有事の時には、覚悟と強さを求められる。
自分の役目と使命を全うせねばならない。
神様もいないと思うほどの絶望を味わった人に、どう支援できるかを、自分との葛藤の中で、
遂行する。
あまりに深い悲しみと苦しみで、魂さえも混乱している人を、現実の中で、冷静に導かねばならない。
終わりのない時間を丁寧に処理し、みごとに解決に向かうが、実は、支援者自身の中で、解決はされずに蓄積し、ストレスとなってゆく。
常に、客観的思考で判断する訓練を要求される中で、救えなかった、癒せなかった事が、
悲しみとして残ってゆく。
「誰一人、本当に救うことなど出来ませんでした。大したこともできず、傲慢な自分だったと思います。」と、一人の支援者が呟いた。
「本当に、一人も救えなかったのかしら?、
何処かに、救われたと思っている人がいるかもしれない。貴方は、たった一人の人を救う為に、この世に生まれて来たのだと思う。」
と、言いながら、私は救いの手を差し伸べた。