パリの風景画

昭和一桁の人達が、病に倒れたり、亡くなられたりと風の便りが、舞い込んで来る。
長寿国と言われて長いが、やはり、90歳を超えるには、相当な自力が必要である。
先日、パリの友人が、日本で絵画の個展を開いた際、思わぬ悲報情報があった。
50年ほど前、日本人アーティストたちが、フランスのパリに憧れて、片道切符で渡仏した。
当時は、一枚の絵も売れず、「パリこじき」と呼ばれていた苦労話を聞いた事があった。
しかし、どこの国のアーティストであっても、大切に守られ、特別な保険や税金の配慮により、腕を磨く環境を与えられたと聞いている。
「パリで死す」と、望んでおられていた方々も、寄る年波、順次日本に帰国されたが、環境も違い、意欲も低下されて、ひっそりと、寂しく亡くなられたと、聞かされた。
そんな友人たちがいたおかげで、私も何度もパリを訪れ、映画や小説のような世界を、体験させて貰えたのである。
大巨匠のような画伯ではなかったが、画家として、パリの文化に貢献され、たくさんの作品を残されている。
個展を開いた友人のパリの絵の中に、その方々と語らった場所をみつけて、懐かしさと切なさが、交錯した。
どこに居ても、老いは容赦なく訪れるが、
遠い異国で出会い、共に過ごした時間は、私の心の中では、いつまでも消えない宝物である。