嘘の真実

「正直言って。」
「本当の事は。」
と、突き詰めて行くと、こんな言葉が出る。
先日の日大の監督やコーチの口から、
どれだけ、この言葉が出たかわからない。
と言う事は、今までのは全て嘘?なのか。
「正直言って、貴方のこと最初から嫌いやったんよ。」
「本当は、貴方と結婚したくなかったんよ」
と、今更言われたら、かなり、ダメージは大きく、立ち上がれない。
言い訳にも使われるが、本来は、相手にとどめを刺す時には、有効で、非情な言葉である。
私はなるべく、使わないように気をつけてはいるが、話し合いが白熱して行くと、終結する手段として、これ言ったら終わりと同時に、決裂宣言となるので、充分注意する。
生まれた時から、嘘は充満していて、特に、幼い頃見せられ、聞かされていた絵本や昔話などは、大嘘だらけで、まず、恐怖観念を植え付けられ、その怖さゆえに、親に怒られるのが怖くて、「してません!」と、小さな嘘デビューが始まる。
いつか、真相がわかればもっと怒られるので、小さな嘘の真実を、少しずつ積み上げて行く。
一生の中で、一度も嘘をついたことがないと、言い切れる人に出会いたい。
高齢になり認知症が進むと、病のせいで、作話の世界が始まる。
「誰かに、お金取られたんよ」
「皆んな、側に来ると意地悪するのよ」
そんな虚偽の中に、優しい真実が、隠れている時がある。
自分の中で、記憶を無くして行く悲しみがあり、どこにしまったかわからないお財布を、誰かかが持って行ったかもと、訴える嘘。
自分で何もできなくなった辛さゆえに、これ以上、誰にも迷惑をかけたくなくて、側にいる人を遠ざける嘘。
「本当やね。ドロボーが入ったかもね。気をつけます。」
「皆んな、まだまだ未熟やから、教えてやってくださいね。」
と、私は、嘘で答えてきたのである。