高級ブランドファッション

しばらく、芦屋大丸の地下を、駆け抜けるように食料品を買うだけの日々が続いていた。
今年は、身内が二人も倒れ、桜を横目で見ながら、あっという間に春が通り過ぎて、
いつの間にか、日本列島梅雨入り宣言。
仕事と介護で、かなりの負担が、身体にも心にも自覚症状を感じてきた。
このままでは、多分、私自身がコントロールできずに、倒れる日が来るだろうと確信していた。
そんなことを考えながら、今日は上りのエスカレーターに乗っている。
小さなデパートなので、店舗数は少ないが、さすが、芦屋のセレブが好みそうなブランドの店が並んでいる。
季節ごとにいち早く打ち出すファッションに、
女性達は、幾つになっても、夢を馳せる。
そして、美しいファッションをまとった、
主人公の自分の為に、財布の紐が緩むのである。
若い頃から、スタンダードなファッションではあったが、たまには、そこのブランドの一押しを購入した。
エルメスやヴィトンなど、名だたる高級ブランドが打ち出す、春夏秋冬の新作には、
必ず、深い意味の物語があり、デザイナーが伝えたい想いが、秘められている。
ショーウィンドウの中が、アートの世界であり、デザイナー達は商品ではなく、作品を作っているのである。
だから、高額だし納得する。
時々立ち寄る店に、まだ、夏も来ていないのに、秋物が飾られていた。
秋にふさわしく、シックな色合いで、透き通るようなシルクシフォンのドレスが目に止まった。
若い頃には、躊躇なく挑戦できたファッションも、もはや、着る勇気も機会もない。
素敵な図柄のものが並んでいたので、
「今年のテーマはなんですか?」と、聞いたら
店長さんが、流れるように説明された。
もはやブティックの店員ではなく、美術館のコンセルジュのようであった。
お金さえあれば、意味も想いもなく、簡単に手に入る人達が沢山いるが、
残念ながら、値段を見れば、私には厳しい。
デザイナーが伝えたい想いを受け止めながら、
帰り道、一瞬の素敵な世界に出会えて、
「さあ、頑張るぞ!」
と、少し、元気を取り戻した時間でありました。