深い川を渡る前に

名だたる科学者も、学者も、名優も、
著者として、最後のくだりには、
必ず、愛を問うている。
福祉の世界に、長く、身を委ねていた私は、
「愛」には、深く触れては来なかった。
相談者の問題は、身体的なこと、経済的なこと、精神的なことが、ほとんどではあるが、
全て、掘り下げて手繰り寄せれば、
問題は、愛の欠如が、発端であった。
過去を遡り、人生を元返すことはせず、現段階の問題を抽出してゆく相談業務である。
作業の中で、常に、人との関係論が見え隠れして、避けては通れない問題ではあるが、
個人の人権や守秘義務もあり、
自らの、依頼がない場合は、想像で終わらせる
確かに、悩みの根幹に横たわる原因は、
愛の喪失感が関係している。
人は死にゆく時に、誰から愛されたか?
誰を愛したか?に、向き合って、逝く。
人生の中で、まったく、問題のなかった人は
苦しみのなかった人は、まずいない。
誰かの為に生き、誰かに支えられて来た事を、
記憶の中に刻んではいるが、運命に翻弄されたり、宿命に準じて、手を離してしまう。
自分の我欲のために、一瞬の迷いの為に決断した事を、忘れはしない。
前に突き進んだ人も、後悔に苛まれて来た人も、今一度、確かめてみてほしい。
自分の周りを眺めてみれば、
貴方の事を思い続けて、側にいて、助けてくれたり、支えてくれた人がいたことがあったか?
反対に、一途に支えたことが、あったかを。
一人でもいたとしたら、この世に生まれた使命は、果たしているかもしれません。