貴方のことを忘れても。

モーニングコーヒーを飲みたくなって、
いつもの、大丸の中の喫茶店に入った。
空いてる席に着いたら、後ろに見覚えのあるご夫婦?
「ちゃんと、右のポケットに入れて!
忘れんように行くのよ!」
狭い店の中で、丸聞こえである。
どうも、ご主人が、歯医者さんに行くらしい、会話が続き、自分で電話されて確認。
まともな応対ができている。
「では、行ってきます。3時に帰ります」
と言われて、立ち上がろうとするご主人に、
奥様風の女性が、追い打ちをかけるように、
「歯医者が3時やのに、また忘れてる!
だから頭がおかしいんや!」と叫ばれた。
こんな場面は、最近はどこにでもあるが、
生の会話を聞くと切なくなる。
季節には合わない、なんだか山登りするようないでたちだが、お顔を見れば、以前は大学教授でもされてたイメージである。
認知症は、人の職業にかかわらず、発症する。
社会に貢献された方ほど、今の姿とギャップが大きく、悲しみは深い。
医療の進歩により、認知症予防、対処療法の薬などが、開発されているが、認知症を止めることはできない。
長寿になった弊害かもしれない。
しかし、なってしまった人には罪はなく、
家族は、受け止めて、ともに生きていかねばならない。
性格も変わり、行動に支障が来て、
徐々に、人格が壊れてゆく。
認知症になる前のこの人との、関わりや、
思い出が、貴方の中にしっかりと、蓄積していれば、変わらず接して行けるのです。
本人が全てを忘却しても、愛された貴方の中に、本人は生き続けていけるのです。