命の儚さ

彼女からのメールが、古い携帯の中に届いているが、今でも、消去出来ないでいる。
かと言って、開く事もない。
夜明け前に、真夜中に、いつも、突然メール音が、響く。
困った時だけ、訴えてくる。
消え入るような声で、
「先生、助けて下さい。誰も、私の言うことを聞いてくれないのです。勝手な時だけ、いつもごめんなさい。」
数日間、続くが、突然音信不通になる。
両親の離婚、引き取られた最愛の父親との死別、娘のためを思い、一人になっても生きれるようにと、莫大な資産を残された事が、彼女を不幸にした。
寂しさゆえに、依存症となり、24時間、365日一人で暮らせなくなり、誰でも、どんな人でも、金銭で、支配しようとした。
騙されている事も知りながらも、そばに居て欲しいがゆえに、お金は湯水のごとく流れた。
「優しいお母さんになって!」
と、叫び続けたが、お金を積んでも、誰からも、得る事ができず、いつの間にか、主従関係は逆転し、誰も居ない部屋の中で、自らの命を絶った。
聡明で、美しく、桜の花びらのような女性であった。
精神錯乱の絶望の世界で、ただ、愛される事だけを、願っていた彼女は、本当に狂っていたのか?
精神科のドクター、訪問看護師、有料のヘルパー事業所が付いていたにもかかわらず、
深い傷を、抱きしめる人がいなかった事が、
今でも、私の中から、彼女が消えない理由である。