90歳の勢い。

「お盆で、孫やひ孫が来るから、買い物に行って来るわ」
ちょっと待って!
思わず、何考えてるの?
命に関わる異常気象で、誰もが、大変な思いの中、93歳のお婆さんが、何を言いだすのん!
骨折して、退院後4ヶ月、ドクター、ナース、ヘルパーさん達に、世話になり、施設は嫌よ、同居は嫌よで、本人希望の独居暮らしが、維持され、継続している。
誰に、支持されるわけでもなく、誰にも遠慮のない暮らしをして来た高齢者は、往々にして、
言うこと聞かん!らしい。
入院に至るまで、気持ちだけが優先する頭に、
おぼつかない足が、追いつかず、
あっち、こっちで、ひっくり返り、とうとう、年貢の納め時。
「もう、一人での外出は無理ですよ。
日常生活も、人様のお世話になるしかないですよ。」と、何度もいい聞かしたが、
「はい、はい、分かっております。
みんなのお世話になって、有難い」と、しゅしょうに答えてはいるが、言うこと聞かず。
高齢者にきついことを言えない人達を、ねじ伏せて行く巧みなしたたかさである。
よそ行きのファッションに身を包み、真っ赤な口紅、頭にカツラ乗っけて、ヘルパーさんを待ち構え、血圧が200あっても、舌下錠で抑え込み、タクシー呼んで、灼熱地獄へ向かう姿は、凄まじい迫力である。
二言目には、「私は、明日死んでもおかしく無いのよ」と言ってた言葉が、吹き飛んで行く。
そんな爆走できるレールを引いてくれてる人のことなどは、もはや頭の片隅にも無い。
やりたい事、好きな事、思いつくままの世界に、周りの心配をよそに進み出した高齢者の姿に
これからが、本当の介護が始まる予感がする。