素敵な孤独

さすが、台風接近の朝の喫茶店は、空いている。
この夏、ガンガンに冷やしていた店内も、
少しクーラーも控えめにして、優しい空気が、
流れている。
いつもの席で、いつものモーニング。
オープンした時からの、長い付き合いである。
幾度かリニューアルもされたり、店長さんも、
ウェートレスも、何人変わったかわからない。
開店当時にいた、あの若い可愛い店員さんは、今は、50歳にはなってるはず。
「えーっ!うそ見たい!」な話である。
同じ席で、同じ風景を見ていた私だけが、
時の経つのも忘れていたけれど、
気が付けば、30年を超えている。
四季は繰り返され、嬉しい時も、悲しい時も、
いつもながらの、マイルドな香り高いコーヒーを、味わって来た。
仕事のストレスも、家庭の疲れも、
私は、この店で癒されて来た。
マニュアル通りのサービス、変わらぬコーヒーの美味しさ。
「いらっしゃいませ」と、「ありがとうございます」だけの笑顔の言葉。
話しかけない優しさが、大好きな孤独な時間を与えてくれる。
ひょっとしたら、私の人生を、一番知っているのは、支援し続けてくれたのは、
この店だったかも知れない。
ふと、気づけば、ソファに埋もれるくらいの小さなおばあさんが、私と、同じモーニングを食べ終わり、華奢な細いタバコを、ゆっくりと、
美味しそうに吸っている。
こんな風に、一人ぼっちになっても、素敵な孤独を味わえたなら、つつがなく、人生を終われるかも知れない。
UCCさんに感謝です。