別離からの旅立ち

一瞬で、背中合わせになる別れ。
もう二度と、共には同じ道を歩きはしない。
「うん?」
と感じたあの日から始まり、積み上げてきた別離への道。
出会った日に、こうなることも想定されていたように思える。
視界の中にいた人を、追い続けてきた目線が、
もはや、高い空に向けられている事を、二人は確信している。
鮮やかに見えた、あの赤い糸は、幻影だったのか?
空虚な脳が、生き生きと蘇る感触は、過去からの記憶であったのか?
思い切り、「嫌!」になったのか?
外れかけた結び目を、結び直さずに放置していた自分が、嫌になったのである。
相手を嫌になる自分が嫌になったのである。
うちなる分析は終了し、すでに報告済みのノートは提出されて、残酷な事後報告となる。
深い情愛は、犠牲と命に直結する。
与えた見返り、手にした権利、失う恐怖は、
相手を遠ざけてゆく。
願った美学が醜悪に変わり、日常の環境を破壊する。
冷酷な身体の中を、熱き情念が走り抜け
振り返る事を妨げる。
自分の存在を持ち逃げしてでも、二人の自由を獲得する。
生々しい傷口が、未来において乾く事を知っている魂が、「さようなら」を決断する。