深い川の向こうに。

「私を探して、きっと見つけて」
一年で、最も美しいクリスマスイブの聖夜に、
貴女との約束は、いまだ果たされてはいない。
あの日、貴女は最後の深い川を一人で渡った。
「行かないで!」
と、泣きじゃくる私の叫びは聞こえましたか?
振り向いた横顔には、壮絶な戦いの後も見せず、微笑んだように見えたのは、私の錯覚?
人間の最後の挑戦を見事に渡りきった安堵感の中で、貴女の痕跡すら残さず、深い川はいつも通りの小さなさざ波の流れに戻った。
貴女が消えた歳をとっくに越えて、貴女の代わりに、十分生きてきました。
「死んだらお星様になるのよ」
と、誰かが言った嘘を信じて、吹き荒れる嵐の中も、真っ暗な森の闇も、一人ぼっちで白い息を吐きながら歩いていた私が、見えていましたか?
貴女と過ごしたあまりに短い14年間は、
なんのために与えられたのか?
貴女の踏むミシンの音、私のための、フリルのついた青い小さなドレスの記憶。
「うん」と「はい」
しか、交わさなかった言葉。
何度も見上げた夜空の星に、流れる涙で貴女を見つけられなかった日々。
いつの日かやってくる、私もまた、一人で渡らねばならない深い川。
「私を見つけて」
と言い残した貴女の悲しみが、やっとわかる歳になりました。
永遠に、母であることの証を、私のために与えてくれた事を受け止めて、
今年のクリスマスイブの夜には、
「きっと貴女を見つけるね」