私はクリスチャン!

「私、クリスチャンなんよ」
と、いきなりの言葉に、
「ヘェ~、洗礼受けたん?」
牧師様の誘いに、深く考えず
「いいですよ~」
と答えたら、早速大層な洗礼式が執り行われ、
びっくりしたらしい。
「洗礼を受けられたお気持ちを一言」
と言われたが、考えてもいなかったので、
「何が~.?」「誰が~?」
と、返したので、牧師様の方が固まったらしい。
それでも、「私はクリスチャン!」と、堂々というあたりが、歳の割には可愛いのである。
彼女とは親戚筋なので、小さな頃から付き合いがあり、奇想天外というか、全てがマンガチックである。
両親を若い頃に無くし、弟と二人きりで、70歳を超えて独身である。
想像を絶する苦労をしてきたはずだが、明るい風貌と性格からは、微塵もうかがえない。
人生の中で、起こる小さな出来事まで、ドラマチックになる私とは相対である。
だから、彼女のように何事にもこだわらず、偏見も野心すらない性格が羨ましい。
辛いことも悲しいことも楽しいことも、
全て、「ワク、ワク」するらしい。
感性の人である。
こういう人は、なぜか他人が支援する。
老若男女、演歌歌手のようなファンがいて、
彼女の住まいの庭には、野菜や果物を植えて育て、彼女が病気で入院すると、飼ってる猫の世話をみんなで請け負う。
素っ頓狂な天然とドジを繰り返し、彼女がいると笑いが絶えない。
福祉の観点からすれば、こういう人の存在が、
地域の中に施設の中に、たった一人いれば、活き活きとした老後の暮らしなるだろうと、確信している。
アダムの事もエバの事も、神様のリンゴをかじった話も知らないマザーテレサを、本当は必要としている。