犬が欲しい!

「ああ、ワンちゃんが飼いたいよ~」
最近、息子に、呪文の様に訴えている。
この年から、犬を飼うと、到底私が先に逝く。
そうなると、あとは息子に押し付ける結果になるので、承諾を取らねばならない。
昔は、捨て犬、捨て猫が多く、見つけると思わず家に連れて帰り、親に怒られた。
「どうするの?貴方が面倒見るの?」
と、怒られたが、そのうち母が面倒見出して、
はれて「うちの犬」になる。
人間より犬が好き!だったので、家庭の中も犬が一匹いるだけで、人間関係を保てるのである。
家庭内別居の夫婦の部屋を、行ったり来たりしながら、均衡を保ってくれていた。
しかし、犬もよく人間を見極めていて、餌もくれるし散歩も行ってはくれるが、自分たちの心の癒しや、ストレス解消のために犬可愛がりする人間のことは、上っ面でなついた格好をしているだけである。
何故なら、滅多に会わない息子が、たまに顔を見せると、満面の笑み。
息子も、ちらっと頭を撫ぜるだけで、遊んでもやらず、声もかけないのに、寡黙な息子のそばにピタリと寄り添い、離れようとしない。
「よく、分かってるわ。人間の本質を動物的な感で見抜いてるかも」
と、感心する。
全ての犬が、ほたえて遊んで欲しいとは思っていないのかも知れない。
ひょっとしたら、尊敬する人のそばで、その人を守るために、忠犬ハチ公銅像の様になりたいと願っていた様な気もする。
可愛いから欲しい!
寂しいから欲しい!
と言ってる私には、いつまでもワンちゃんは、
残念ながら来ないだろうと思う。