傷ついた天使のはね

セクハラ、パワハラという言葉が、私の若い頃にあれば、訴えていたかも知れない。
「この人が、セクハラしました。」
「あの人が、パワハラしました。」
一言で済んでいたはずである。
女性としての恥じらいや社会人としての世間体を考えれば、決していうべき事ではない常識がまかり通っていた。
女性が政治家になったり、いっぱしの意見を言うと、ただのウーマンパワーとさげすまされた時代であった。
現代になっても、女性蔑視や女性の社会での位置付けは、まだまだ世界から見れば低い。
いつの日か、愛する男性と出会うためにうまれてきたのに、出会うまでに、男性から性の対象として失望させられたり、女性として差別を受けたりで、心に深い傷がついてしまう。
「そんなことぐらいで、何言ってるんだ!」
と逆恨みになり、ますますパワハラをされて行く現状であった。
母親から受け継いで来た恨みと涙が、歴史を超えて、血の中に脈々と流れ、場面と遭遇した一瞬で変容する。
「この人痴漢です!」
「上司から、虐待されました!」
と、突然叫ぶのである。
身に覚えのない男性は驚き、狼狽する。
言い訳をすればするほど、女性達は振り上げた拳を、決して下ろしはしないのである。
死ぬほどの辛い悲しい道を、誰にも相談できず、弱者としての烙印を押されて来た人生の中で、たった一度だけでも、
「この人が、私を傷つけたのです!だから、誰かを愛することができなくなったのです!」
と、言いたかったのである。
許せないのではない。
善人ぶって、知らん顔し続けて来たことを、
「謝ってください」
と、思っているだけなのです。
そうすれば、未来に希望を持って生きていけるのです。
「ごめんなさい。」のたった一言。
もしも、貴方の周りでそんな彼女がいたら、
泣き叫んでいたら、強く抱きしめてあげてほしい。
生まれた時は、小さなな可愛いあどけない女の子だったのですから。
訳あって、一人で生きていく中で、天使の羽は傷だらけになってしまっただけ。
貴方の温かな胸で、癒してあげてほしいと、願っているのです。