虚に抗う勇気

60歳を越えた頃から、人の死に方、生き方に、目が行き出した。
最後まで、自分の考えを貫き通した頑固者。
親や人の言うこと聞かずに失敗を繰り返すわがまま娘やわがまま息子。
危険を承知で人助けして命を落とす馬鹿者。
騙されても騙されても懲りない正直者。
「そんな生き方、どうなん?」
と、言われて来た人物が、私から見ればキラキラと輝いて見えて来たのである。
人情も薄れ、お金第一主義の我欲、自分さえ良ければ幸せを追求し続けている風潮の日本。
そんなウェーブの中で、損得を取り入れずに、
我が道を貫き通すのは、小さな針の穴に絹糸を通すごとく難しい。
魂から発信する覚悟と決意がなければ、危険な、命を落とすかも知れない岩山を、走り抜くことはできないのである。
人生の中で、自分だけで決断しなければならない事が、歳を重ねるごとに増えて来る。
若い時のように、体力も能力も失いつつある中で、世の中の虚に抗う事には勇気がいる。
どんな答えも、「失うものなど何もない」と、言い切れる人間だけが、天に向かえると確信している。